【完】そばにいるだけで
一緒に観た映画は、前評判のわりにはぱっとしない、ありがちな物語だった。
感動して泣くわけでもなく、爆笑してお腹を抱えるわけでもなく。
だけど、素直に映画の感想が言えない。
もし、桐生くんが「いい映画だった」って思っていたら、それを否定することになってしまう。
別にわたしが悪いわけではないのだけれど、なんとなく微妙な空気が二人の間に流れていた。
「まあまあだったね」
桐生くんが突然ぽつりと言った。
その一言で、助かった、と思った。