帰り道

帰りは手をつないで帰った。
私の手は冷たかったけど、正人の手は暖かかった。
私が「寒いし、手が冷たい!」と言うと、もっと強く握ってくれた。
嬉しかった。
嬉しくて、空を仰いだ。
「星、あんまりないね。」
私は彼に言った。
「え?」
聞こえなかった・・・かな。
「星、少ないなぁと思って。」
「あぁ。」
そう言って彼も空を仰いだ。
「あ、でもそうでもないかも。」
星が増え始めた。
「僕は星なんかよりもきれいな人が近くに居るから。」
彼はそう言って私を見た。
「え?」
私は必死で、聞こえないふりしてた。
「きれいな人。」
彼は私をまっすぐ見て繰り返す。
「あぁ。湊か。」
「違うよ!」
「じゃぁ山上さん。」
「違うでしょ。」
彼につっこまれた。
「分かった!義孝だ!」
私は男友達の名前を叫んだ。
義孝は、すっごく仲がいいってわけでもないけど、気さくで笑顔がかわいい男の子。
「違うって。」
彼も笑ってた。
そして彼は私の肩に頭を乗せて、
「幸せだね。」とつぶやいた。
私も「うん。」とつぶやいた。
「今俺が何考えてるか分かる?」
彼がメガネをはずしながら言った。
私はメガネをはずしてる時はキスするときだけだと、知っていたけど、言わなかった。
「私の頬にキスしてくれるんじゃなかったの?」
私は催促した。

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