帰りたくない

「そうだったね。」
彼は微笑んでた。
「どっちにしてくれるの?」
私ははしゃぎながら聞いた。
「両方してあげるよ。」
彼はそう言って本当に両方してくれた。
私もお返しにほっぺにキスして、
「してもいい?」
って聞いた。
彼はまた、黙ってうなずいた。
私達は2・3秒のキスをした。
「そろそろ帰らないと。」
彼はリュックを背負った。
「そこまで一緒に行くよ!」
私もリュックを背負って追いかける。
道の途中で2人は立ち止まった。
「帰らなくていいの?」
私は聞いた。
「帰らなきゃヤバイけど、次の信号まで。」
彼は私をまっすぐに見てる。
私は彼を抱きしめた。
優しく、彼も抱きしめてくれた。
「背が違うとやりにくいよね。」
やっと離れて私は言った。
「何が?」
分かってるくせに。
「キス。」
「ああ。」
彼はかがんでくれた。
「私が背伸びすればいいんだよ。」
ちょっと間をおいて私は言った。
「してもいい?」
「うん。」
彼はそう言ってかがんだ。
いつもよりずっと長いキスだった。
信号がいつのまにか変わってるぐらい長いキスだった。
「青だよ。」
私が言うと彼は帰って行った。
「じゃぁね。」
「うん。」
「またメールするから。」
「うん。」
お互いに手を振って、反対の方向に歩き出す。
私は抱えきれないぐらいの幸せを抱えて帰った。


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