独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「どう、…したの?」

「…ちッ…!」

「…血…ッ!?」


 ――ッまさか、…誰かが先にここに侵入して…“殺された”!?

仮定をあげ、それを消滅させる否定の考えを頭にめぐらせる。

いつになく動揺したシオンをなだめながら、彼女に起きた異変を共有しようと体を前に乗り出した。

薄暗くて見えないが、手の平を床から反らしてその隙間から中身を確認しているようだ。


「地上で最も汚らわしいと謳われる…黒い紳士の排泄物がぁ…!!私の、…私の手のひらにぃい!!」

「…は」

「Gだよ!Gの糞がぁ!!ひぃいッ嫌だぁ!出る、出ようよアリス!!ココワタシトテモコワイヨ!!」

「…はぁ…」


今にでも暴れだそうとするシオンに心底呆れつつも、ポケットに入れた携帯を取り出し、カメラ機能を立ち上げ、ライトをつける。

一瞬の眩しさに目をしかめながら、今にでも発狂して暴れだしそうなシオンを後ろから照らした。

そこにあったのは、彼女が言うこの世で一番汚らわしい物ではなく。

建設されてから一度も掃除されていない証拠を示す、黒い塊だった。


「神よ、神よ私をお助けくださ…――あ。ただのホコリの塊だった。ふぅ、アリスすまない、取り乱してしまったでござる。許してたもれ」

「…シオン、いくらオンエアで見逃した水戸KOMONの再放送が昨日から始まったからと言って、リアルの世界で使わないで。キャラが被るじゃない」
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