お嬢様の秘密
「変な友情もこれで終わりね。」


美穂さんは紐の先をガソリンの水溜まりに垂らした。


「私はまだ死にたくないの。」


そう言い口角をニヤッとあげた。


「じゃあね。」


火をつける瞬間。






「おねがい!みんな逃げてーーー!!!」






ボワッ!






火の勢いが強く私は倒れた。


「....ゴホゴホ....。」


幸い私は火からは5メートルほど離れていた。


でも....たぶん逃げられない。


しばらく拘束されていたせいで歩くことすらできない。






ん?


なんか体が重い....。


「あ、葵.....?」


「無事で良かった....!」


葵.....。


こんな迷惑かけてばっかの私を救ってくれてありがとう…。


葵の顔は少し煤かぶっている。




「逃げるぞ。」


「みんなは?」


「恐らく無事。学園長がユリを頼むって。」


「ごめんね。でも1人で逃げて。」


「は?何言ってんだ!」


いつもの優しい顔が嘘のように怒っている。


「葵は逃げられる。....逃げて。これ以上迷惑をかけられない。」


「誰が迷惑だなんて言ったか?俺はお前が必要なんだよ!


…………要らない存在なら命をかけるわけないだろ!!」



ハッと目を覚まされた気分になった。


最期に好きな人からそんなことを言ってもらえて嬉しかった……


私の死に場所がこんなところになるなんて。


葵は生きてなきゃいけない。


素性は知らないけど、この学園にいる限り、相応な家柄だし。


でも最期は笑わなきゃ。


「じゃあね。葵。また会おうね!そのときはちゃんと言おうかな....。」


「…何を?」


「秘密!また会うときまで待ってて。」


私は葵を安全なところに連れ出した。


「じゃあね!早く逃げなよ!」


自分でもありえないほどの自然な笑顔を葵に向け、私は葵を火足がまだ進んでいない安全なところへ押しやった。


ーボワッ


また火が大きくなり始めた。





「ユリ..………!戻ってこい!」






寒い寒い12月の終わり。


本当はあと3日で恋人たちのお楽しみ。


クリスマスだった.....。





< 171 / 312 >

この作品をシェア

pagetop