モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は、黙って膝の上で祈るように手を組むと、BGMのピアノにあわせて、ひとさし指でしばらくリズムを取っていた。

「すみません、大丈夫です」
書き終えて言う。
「次、掃除。
二階からやってくれ。
掃除用具は一階の階段裏のクローゼットにある。
毎日大掃除をする必要はない。
適当にやってくれ。
但し、物を動かすな。
いや動かしてもいいが、必ず元に戻すように。
…前にひどい目にあった」
最後の部分は小声で呟いてから、黙って指で音を追う。

私は、意外にも適当でいいと言われた事にホッとした。
この大きな家を細部まで掃除してたら、とても一日では終わらないだろう。
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