モノクロの音色よ鮮やかに響け

4、ピアノ生演奏

雨の日は、退屈だ。
例年になく梅雨らしい梅雨に入ってから、楽しい散歩はオアズケだった。

川畑邸の仕事は週に三日。
川畑がゴミの日を選んで頼んでいるので、金曜日に来た後は火曜日まであく。
一人、傘をさして買い物へ行き、休み前の買い溜めの荷物と一緒に戻ると、リビングからのピアノの音が私を出迎えた。

『木枯らしのエチュード』
クラシック曲のタイトルは、作曲者本人がつけた物は少なくて、音楽用語や記号で分けられていた物を、後から他の人が曲のイメージからつけた物が多いという。
買った物をキッチンで整理しながら、この曲に木枯らしと名付けた人はセンスがいいな、と私は思った。
早く、激しく、重なるように次々と繰り出される音は、セピア色の枯れ葉が風に舞うイメージにピッタリだ。

今日やる仕事を終えた私は、まだ時間が早いのを確認して、やれる事を聞こうとリビングへ入った。

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