【完】霧雨カーテン
 ぶっ続けの会話に、間を持たせることで気負いしなくて済むのは、すごく楽に感じられた。…が。



「藍は?」



 突然話を振られ、狼狽した。言葉に詰まり、体中の血が一気に巡る。


 それは、言葉の主が、太陽だったから。



「私は…っ」


「あ、そうか。藍はいつもこれだっけ?」



 ようやく絞り出せた声。けれどそれに、彼は気付かない。私はそれに頷くしか無かった。


 ……まさか、知っていたなんて。その事実だけでも、混乱を来す程の価値が、私の中にはある。


 どうして今日はこんなにも予定が狂うのだろう。眼鏡を忘れ、太陽と偶然会い、妃奈と由奈にも会い、そして私は緊張で声すら上手く出ない。


 彼相手でも、ここまで上手く反応を返せないのは、今日この日が初めてだった。きっと、まともな会話そのものが久々だったからだろう。会話と呼んでいいレベルのものだったかはさておき。



 本当に、どんな一日になってしまうのやら。先が思いやられる。

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