Tricksters
トントンと、二回ノックする。
「今、開けまーす」という女性の声がして、直ぐにドアが開いた。
何のへんてつもないセラミックのドアだ。
「面接の方ですか?」
「はい、そうです」
中から出てきたのは、俺よりちょっとだけお姉さんで
清楚な感じの、すごい美人。
ミエちゃんとは違い、シックな水色のスーツを品よく着こなしていて
スカートは膝丈。
この微妙なライン、意外と悩ましい。
「所長がお待ちです。どうぞ」
「どうも……」
お姉さんが、大きく開いたドアに遠慮がちに入る。
中は広くて、そこは所長専用オフィスというに相応しい立派なものだ。
俺の背丈ほどの、観葉植物が葉を広げている。
「トリックスターズへ、ようこそ。所長のゼンだ」
その男は────いかにも人懐こい笑顔を浮かべて右手を差し出し俺を待っていた。
低く通る声に
かなりの男前。
高そうなスーツに、クールビズだからノーネクタイってわけだ。
「はじめまして……前所長?」
疑わし気に手を握ると、グッと痛いくらいに握り返された。
所長は、人懐こい笑顔をひきつらせる。
「人を過去の産物みたいな言い方しないでくれるかな?」
清楚なお姉さんが、「どうぞ」と言って冷たいお茶をテーブルに二つ並べた。
「まあいい。名前なんてものは何の意味も持たない。
座って話をしよう」