Tricksters
「はい、失礼します」
豪華な応接セットのソファーに座る。
今までに座ったことのないような座り心地だ。
俺の目の前に、所長が座り。
その隣に、清楚なお姉さんが座った。
綺麗に足を揃えて、分厚いファイルを開く。
俺は、一応用意してきた履歴書を茶色い封筒から取り出して、二人の間に差し出した。
「これは?」
「履歴書です。あったほうがいいと思ってもってきました。昨夜は、何も言われませんでしたが」
お姉さんは、多分昨夜会話した人だと思う。
丁寧な話し方と声が一緒だ。
「ええ、言わなかったわ。私は時間と場所を指定して、貴方は正確にここにたどり着いた」
お姉さんがニコリと笑うと、俺は胸がズクンと騒いだ。
しょうがないだろ?
この人、めちゃくちゃ美人なんだから
俺には、李花がいるから浮わついてちゃダメだ。
「履歴書はいらない」
俺がお姉さんに見とれている間に
所長は、履歴書を茶色い封筒ごとビリビリと破いた。
この野郎……
それなりに苦労して書いてきたのに……