Tricksters
「ああ、びっくりぱなね。
カモフラージュで表向きに始めたら儲かっちゃて儲かっちゃて、大変なことになってるよな。

おかげで、青天目に事務所も持って社員も十倍に増えたわけだ。

結果オーライだろ?」


所長が手を叩いて笑ったが、佐藤さん以下は黙々と作業を続けていた。


「馬鹿笑いが聞こえたと思ったら、販売促進部にいたんですか所長!

シャパネットガタガタから、びっくりぱなのテレビショッピングの件でお電話です」


ユカリさんは、鍵をかけた扉とは別の扉から中に入ってきた。

方向的に、所長室直通なのかもしれない。
俺も最初から、そっち通せよ。そしたら、怪しいと思って逃げたのに!


「わかったよ。ユカリ、ありがとう」


所長は、ユカリさんを抱き寄せて耳元で優しく囁いた。


だけどユカリさんは、ハンディホンを所長に渡すと露骨に嫌な顔をした。


所長は、くるりと椅子を回転させて俺に背を向けて通話する。


「はい、お電話代わりました~」


間抜けな声で、営業トークを始めた。


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