Tricksters





所長の長い指が、ユカリさんの顎を強引に捕らえる。


「いい加減にしろよ、ユカリ」




ユカリさんは抵抗しない。
何も言い返さない。

ただ、アイツを見つめている。

見とれていると言ったほうがいいのかもしれない。




所長の顔が、ゆっくりと傾きユカリさんは瞳を閉じる。

月に照らされて、二人の輪郭が一つに合わさる。


浅く徐々に深くなっていく。


アイツの手はユカリさんの後頭部を優しく撫でる。
ユカリさんの腕は、アイツの背中で組まれた。


なんて甘くて長い大人キッスだ。



アイツがとても大切そうにユカリさんに触れるから見てるコッチまで泣きたくなってくる。

なんで、いつもそうやって接してやれないんだろう……








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