別れの曲を君に(短編)
「あの……新しく来た先生ですか?」
綾は唯一思いついた、男性の素性を口にしてみた。
「ええ。そんな所です……」
ああ、やっぱり。
綾は、納得した。
どう見ても生徒には見えないし、教職員の中にも見覚えはなかった。
残る選択肢は、新任の教師くらいだ。
きっと、産休か病欠の先生の代わりにでも呼ばれた、臨時の教師なのだろう。
「音楽の先生……なんですか?」
「はい。他に能がなくて」
男が、静かに笑った。
少し、自嘲気味に。
そして、悲しげに。