別れの曲を君に(短編)
幼なじみで、ご近所さん。
同じクラスの矢部良平とは、友達以上恋人未満の微妙な、それでいて心地良い関係だった。
『気が置けない男友達』
それが、一番当たっているかも知れない。
いつもならこんな時頼りにするのだが、今日は『ピアノの日』で、やはり定時でさっさと帰ってしまっていた。
スラリとした長身で、一見スポーツマン。
実際に、運動もそこそここなす元気少年なのに、ピアノの腕前は、「何とかコンクール」で入賞するくらい凄いと言う、変なヤツなのだ。
実は、良平にもちょっとした話があったのだが、これも空振りに終わってしまった。
「はぁ……。今日は厄日よ、きっと」
綾は、我知らず、早足になる。