HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「正直言うとそうかな」
久米はちょっと苦笑いをして、「毒のこと参考になったよ。ありがとね」と爽やかに笑った。
そんなことを話していたらあっと言う間に家にたどり着いた。
鬼頭と書かれた表札の前で久米は足を止め、
「へぇ?ここが鬼頭さんち?大きくてきれいだね」と物珍しそうにあたしんちを眺めた。
「そお?普通だと思うケド」
気のない返事を返すと、
「んじゃあたしらこっち~♪」と言いながら乃亜が梶の背中をぐいぐい押して、楠家に入ろうしているところだった。
「じゃ俺も帰るね」
「うん。送ってくれてありがとね」
久米は「中どんな風になってるの?」と聞いてきたけど、「見てみたいな」とは言わなかった。あたしも「あがってく?」とは言わなかった。
大人しく手を上げると、爽やかな笑顔で立ち去っていこうする。
帰り際まで爽やかなヤツ…
そんな後ろ姿を見てあたしは久米に声を掛けた。
「久米」
あたしの声に久米がゆっくりと振り返る。
「あたしは七人の小人や猟師に守られてるだけの可愛いお姫様じゃない。
王子様の迎えを待っている女でもない。運命はこの手で掴む。
そして魔女の殺意にも、立ち向かっていく女。
毒リンゴを渡されても―――返り討ちにしてやる」