HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
□Forest.2
□Forest.2
◆◆◆◆◆◆◆◆
時計は夜の19時近くを指し示している。
「しまった。夕飯どきに失礼だったな……」
白いしっくいの三階建ての真新しい家の玄関で、今更ながら常識が僕の頭の中を巡る。
一応……森本の家に伺う旨は、彼女の母親に電話で伝えてはあったけど。
森本の母親は僕が担任だと名乗り、そして今から森本を連れて伺います、なんて切り出すとあからさまに怪訝な様子を見せた。
無理もないか。
担任を受け持つ教師は経験数も少なく、彼女の母親からすればほんの若造だ。
そんな男が何を話しにくるのだ、と言う態度がまざまざと見えた。
緊張しながらネクタイを直すと、
「…大丈夫です。うち夕飯遅いし…。それに全員揃って夕食なんてないですから」と森本が抑揚のない声を出して、おずおずと僕を見上げてきた。
「そうなの?お父さんとお姉さんは帰りが遅い?」そう聞くと、
「そうですね。お父さんは大抵10時ぐらいだし、姉は―――帰ってこないことも結構ある…」
そう答えが返ってきた。
そんな話をしていると、
ガチャッ
重々しい扉が内側から開いた。