HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


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昨日のように久米と梶と一緒に家まで帰った。家の前で久米と梶はあっさりと帰っていく。


久米はもちろんのことだけど、今日乃亜も明良兄と一緒だから楠家には居ないし、それを知った梶も自分の家に帰って行った。


ポストを見ると―――今日も嫌がらせの手紙類は入ってなかった。


鞄を放り投げると、あたしは制服を脱ぎ捨てた。


バスルームで頭から熱いシャワーを浴びると、さっきのA組男子の言葉がシャワーの音に混じって不快に耳に蘇る。




『あんた色んな教師とヤりまくって、成績上げてもらってるとか。A組で、あんたが教師たちに体売ってることは誰もが知ってることだ』



あたしは口元を覆った。


今朝カビ用の洗剤をまいて、風呂掃除したからやたら塩素の匂いが鼻につく。


強い刺激臭にむせそうになって―――でも実際には、きっと匂いなんて残っていない。


これは……あたしの―――怒りや、ショックだ。


怒ってる?ショックを受けてる??


どうして―――?前だったらそんなこと気にもしなかったことなのに。




だけど実際あたしは水月と付き合っていて、彼とは教師と生徒以上の関係だ。


甘いキスを交わし、体温が混ざり合って溶けるほどに抱き合って、手を繋いで眠る。


普通のカップルだってしてることだよ?




だけど―――それが禁断の愛だと―――……



思ったから。




あたしたちが教師と生徒で居る限り―――




普通の幸せは望めないの?




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