HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


!?


『ギャァ!ちょっと!首はやめて!!』僕が叫んでまこからスヌーピーを取り上げると、まこは面白そうに笑った。


『何もお前の首絞めてるわけじゃないし、何必死になってるんだよ』


『前科者の言葉に説得力なんてありません』


僕がつんと顔を逸らしてスヌーピーを戻すと、まこはバツが悪そうに頭を掻いた。


以前僕はまこに首を絞められたことがある。


と言っても本気で殺意があったわけじゃないと思うケド。


喧嘩(?)の延長線だな…


とにかく僕は首が弱い。


昔空手をやっていたときに、落ち癖なんて厄介な癖をつけてしまったから、未だにネクタイなんて類いのものは付けられないんだ。


まこに首を絞められた僕は―――当然意識を失ったわけで……


あのときの感覚を思い出すと、たとえ被害者がぬいぐるみであろうと可哀想すぎる。


あぁ…もし殺されるとしたら、絞殺だけは絶対いやだな。


なんて考えを雅に何気なく以前話したことがある。すると、


『じゃぁ毒殺にしてあげる♪』なんて、あの可愛い顔でにっこり笑顔で言われた。


そして僕を指さし、




『あたしに溺れて死ね』なんてにこにこ笑顔のまま怖いことを言い出したから、僕は震え上がった。




まこの言う通り―――雅は希代の悪女だ。

※まこ(いえ、俺はそこまで言ってませんが…)



僕はちょっと大きく息を吸った。




狭い車内に居ると―――


“ヒプノティックプアゾン”をより身近に感じる。


甘くて少し官能的な香りが―――鼻腔をくすぐる。




まるで催眠術にかけられたように、僕は彼女の虜になり、溺れていたのは




確かだった。




雅が使った“毒殺”という言葉通り、僕はいつか彼女に殺されるかもしれない。



でもそれはそれで



幸せなのかもしれないな。






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