HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「だけど!」
さっきまで項垂れたまま俯いていた楠が声を荒げて顔を上げる。
「しょうがないよ。神代先生まで疑われるてるし」
と、雅の感情のない声が聞こえる。
こんなときだって言うのに―――
僕は彼女の気持ちが分からなかった。その無表情からは何も読み取れなかった。
だけど僕がいくら彼女の顔を見たって、彼女の微妙に変化する表情を見たって、
そこから何かを読み取ることはできない。
僕は僅かに吐息をつくと、
「本当にやましいことはないんだね?」とわざと大げさに言って雅たち三人を見渡した。
僕は―――このUSBに、もちろん試験問題が入っていないことを知ってる。
大体にしてこの三人が試験問題盗難なんて犯すわけない。
僕は諦めたようにUSBのキャップを開けた。
パソコンのUSB接続の差込口にそのメモリを繋げる。
ドキン、ドキン…
と心臓が煩く鳴る。
―――僕はこの一瞬、石原先生どころか三人も騙した。
繋げる瞬間僅かに手が震えたが、それを押さえるようにぐっと力を入れて。
USBフォルダが展開して、画面が切り替わる。
三人が息を呑んだ気配があった。