HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
僕は石原先生の腕を掴んだまま彼を見据えていると、
「何をそんなに熱くなっているんですか」
と石原先生はちょっと迷惑そうに笑う。
「もういいよ、神代。俺たちはそういう目で見られてるのは分かってるし」
と梶田が吐き捨てるように言い、
「……そうだよ。先生だけでもちゃんと信じてくれたからそれでいいよ」
と楠が力なくうな垂れる。
雅は―――
制服のポケットに両手を突っ込んで、ただただ冷ややかな視線を石原先生に向けていた。
「まるで安っぽい青春ドラマみたいだ。生徒のことを大事にするのはいいですけどね、今頃流行らないでしょう、熱血先生なんて」
石原先生はわざと冗談めかして言うと、僕の腕を乱暴に払おうとした。
僕はその腕を掴む手に力を入れ、やや強引とも呼べるような仕草で彼を前に向かせた。
「彼女たちに謝ってください」
ひとこと言うと、
石原先生は僕の力にか、僕の普通じゃない気迫にか、
どちらか分からなかったが、彼は諦めたように三人を眺め、
「疑ってすまなかった」と小さく言葉を返した。
欲しかった言葉とは違うが、ここであれこれ言うのもまた大きな揉め事に発展するかもしれない。
僕は腕を放そうとしたけど、
「何それ。
悪いことしたときは『ごめんなさい』でしょ」
両手をポケットに突っ込んだまま、冷ややかな視線で雅が石原先生を見上げていた。