HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
久米と犯人が餌に食いついてきた。
うまく行けば右門 篤史もおびき寄せることができる。
「でも大丈夫なのか?」
今更ながら梶が不安そうに聞いてきた。
あたしは軽く肩をすくめて、
「だからこのメンバーをチョイスしたの。
ストーカー犯人は必ず“この店”に現れるから。
いざとなったら守って」
これがお願いする態度ではないけど、いつも以上にしんみりするのはガラじゃない。
でも熱意(?)は伝わったみたい。
「おぅ!任せておけ!」
頼りにされているのが分かったのか、梶が急に自信ありげに胸を叩いた。
一方明良兄は、さっきタバコを吸い終わったばかりだと言うのに、また新しいタバコを口に銜えている。
よく見たら灰皿には吸殻がたくさん残っていた。
来てそう時間が経ってないって言うのに。
「梶、ミルクティー買ってきて」
セルフサービスのカウンターを目配せして財布を取り出すと、
いつ犯人がこの店にやって来るか分からない状況であたしを残していくのが不安なのか、梶はさっきの自信はどこへやら、
急に不安そうになってあたしを見つめてきた。
「…でも」
「大丈夫。明良兄もいるし。第一犯人もここで妙な騒ぎを起こせないって」
小声で言ってあたしは財布を梶に手渡した。
その財布を梶が押し戻す。
「いいって。ここは俺の奢り。ミルクティーだったよな」
あたしの言葉に納得が行ったのか、一旦は腰を上げたけれどそれでも不安そうにちらちらこちらを窺いながらカウンターに向っていく。