HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
でも一人で動くのもやっぱり限度がある―――
誰かに協力を願うにも、危険にさらすと分かっていて、それはやっぱりできない。
とりあえず、向こうから何かしてこない限りはどうにもできない。
それが現状―――
昇降口に行くと、久米が思い出したように手を打った。
「しまった。教室に忘れ物した」
「またぁ?あんたこないだも忘れ物って言って、教室帰ってったよね」
ちょっとうんざりしたように目を細めると、
「昔から忘れっぽいんだ」と久米は恥ずかしそうに笑い、「ちょっと待ってて。すぐ戻ってくるから」と慌しく駆け出して行った。
ため息をついて腕を組むと、久米は走りながら振り返り、
「絶対待っててよ!」と念押ししてきた。
あたしは「分かってるって」という感じで軽く肩をすくめ、走り去る背中を見据えていた。
そのときだった。
「あれ?雅、帰ったんじゃないの?」と乃亜の声がした。
隣には梶も居る。
「鬼頭も同じ方向だろ?って言うか乃亜ちゃんちの隣だったもんな。一緒に帰ろうぜ~」
と何も知らない梶は能天気だ。
「あたしは…」
言いかけたとき、鞄の中でケータイが震えた。
ギクリ―――として、あたしは目を開いた。