HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
久米―――……は今この場に居ない。
あいつなの?やっぱりあいつがストーカー…
そう思って恐る恐るケータイを取り出すと、メール受信は水月からだった。
思った以上に大きな安堵のため息がもれた。
“いまどこ?不審者が出たって言うし危ないから送ってく”
メールの内容を見て、
“今日はみんなと帰るから大丈夫。梶も居るから安心して”と短く返事を打った。
こう返しておけば水月も安心するだろう。
返事を送信し終えると、あたしは梶に向き直った。
どこかでそのストーカーがまたあたしを監視してるかもしれない。そう思うと気が気でなかった。
「梶、しばらくあたしに近づかないで」
あたしが早口に言うと、突然の言葉に梶は目を開いた。
「は!?急に何言い出すんだよ」
「いいから言う通りにして」あんたを巻き込みたくないんだよ。
あたしはその言葉を飲み込んで、梶を睨み上げた。
「や。急に言われても意味分かんねぇし」
「そうだよ、雅…どうしたって言うの?」乃亜も不審そうにあたしを見てくる。
「今は説明はできない。でも言う通りにして」
「そんなの納得がいかねぇだろ?俺ウザかった?」
普通にウザいだけなら、はっきり言う。梶だってそんなあたしの性格知ってるから、こんなに食い下がってくるわけだ。
「雅、ホントに何があったの?」乃亜は不審そう…ではなく、その表情を心配そうに曇らせている。
「何か最近変だよ…」
ダメだ。この二人には納得のいく説明が必要だ。
いつまでも曖昧な言葉で隠しおおせない―――