HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
その後、僕たちは特にお咎めなし。森本のお母さんには校長先生自ら対応してくれる、とのこと。対処の仕方が慣れてるようで、マニュアルみたいなものも存在する、と校長先生はちょっと悪戯っ子のように笑った。
そのジョークとも本気ともつかない対応にちょっとびっくりしたが、とりあえず
首の皮一枚繋がった?てこう言うときに使うのだろうか…今度和田先生に聞いてみよう…なんて考えてる場合じゃない。
「森本、今日朝礼に来てなかったけど」校長室を出て、隣に並んだ森本を見ると
「……さっき来たばかりです…おか…母がすっごい剣幕で学校に電話しているのが聞こえちゃって、慌てて…」森本は恥ずかしそうに前髪をぐしゃりと掻き揚げる。
「そっか。僕の為にわざわざありがとう」
本心だった。
僕は、森本がなるべく警戒しないよう笑顔で接したつもりが、森本は俯いてしまった。スカートをきゅっと握っている。
「先生……あの…」と森本が小さな声で言いかけたとき
「神代!」
と梶田が血相を変えて走ってきて、
「梶田?どうした?」
「どうしたもこうしたもねぇよ。いきなり校長室呼び出されてさ!鬼…じゃなくて、乃亜ちゃんが心配して」
梶田はきっとこう続けたかったのだろう。
『鬼頭が心配してる』って。
「大丈夫。特に何の問題もない。ちょっと事情を聞かれただけだから。って“楠”に伝えてくれる?」と僕が笑うと梶田はちょっと考えるように首を捻り、けれどすぐに
「おう」と元気に返事をしてきて、ちょっと安心した。
梶田は一応は安心したのか、回れ右をして来た道を引き返していった。
改めて、森本と向き合う。
「あの……先生、母が失礼なことを…ホントにすみません」
森本はバっと頭を下げた。
「いや、いいよ。気にしてない」と言うのは若干の嘘があるが。
「あたし、クラスの子に苛められてません。確かに…倦厭はされてるだろうけど…」
うん…まぁそんな感じはするけど…とは言えない。