HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



6時限目。


この日授業がなかった僕は、ふと思い立って雅たちのクラスが授業を行っている体育館に足を向けた。


雅を見たかったのはもちろんだが、それよりも僕は久米のことが気になった。


体育館で男子はバスケットボール、女子はバレーボールの授業がそれぞれ行われていた。


雅は長い髪をポニーテールにして、前髪も全部上げてピンで留めている。


雅はどんな髪形をしても可愛いけれど、僕は特にあの髪形が好きだ。


黒い毛先をぴょんぴょん跳ねさせ、雅はバレーボールのミニゲームに励んでいた。


雅は、驚くほど頭がいいけれど、運動に関しては標準(?)な方。


ずば抜けて運動神経が良い訳でもなく、かといって悪い方でもない。


だけど球技はあまり得意じゃないのか、彼女が受けたパスはたまに変なところに跳ねてしまう。


それがまた可愛らしかった。


こんなことまこに言ったら、また「ぞっこんLOVEだな」なんて冷やかされるから、黙っておこう。


と、まぁこんな所で女子の体育授業を覗いていたら、“ぞっこんLOVE”どころか“変態教師”だ。


僕は雅を眺めるのをほどほどにして、久米の居る男子授業の方に目を向けた。


これぐらいの大抵の男子生徒はバスケが好きだ。


僕もそれなりに高校生のときは授業では楽しんだ。


賑やかな声を振りまいて、男子たちはバスケットボールを転がしている。


短いゲームが繰り広げられ、今久米と梶田が同じチームが試合をしていた。


久米がバスケットボールをパスされるたび、ドリブルするたびに隣のコートから女子の華やかな声援が飛んでくる。


なるほど、応援したくなるのも理解できる。


久米はその爽やかなルックスを裏切らない活躍を見せていた。







< 88 / 838 >

この作品をシェア

pagetop