君のためにできること
なつきは、水玉模様のワンピースを着ていた。髪はアップにしていたので童顔の顔もやや大人びていた。


「どうしたの?本当に連絡待っていたんだよ?」


「ああ、いや、すまない」


「何か様子おかしいよ?何かあったの?」


メールの件を話そうかと思ったが、他人に見えないメールの話しなんて頭がどうかしたのかと思われてしまう。


「あ、そうだ。今日は海にでも行こうか?」


必死にごまかす俺に、なつきはまた大きな瞳をそっと近づけて来た。


「隠し事してるでしょ」


瞬間、部屋にいきなり、押し込んで来た。


「やめろよ、どうしたんだよ」


「それはこっちのせりふよ。私に何か隠し事してるでしょ。言ってよ!」


気の強い眼差しに負けた。こうなるとなつきは手がつけられない。


「実は、この前のメールのことなんだ」


「メール?」


なつきは不思議そうに小首をかしげた。


「前、話しただろ?なつみのメールが来たって。あれからまた来たんだ」


「まだ、そんな寝ぼけたこと言ってるの?だいじょうぶ?病院行こうか?きっと、疲れてるんだよ」


「こんなこと話しても信じてもらえないかもしれないけど、そのなつみから来たメールのおかげで俺は電車の脱線事故から救われたんだ。今、お前が来ることも予言してた。しかも、そのメールは俺にしか見えない。見せようとすると消えちまうっておまけつき」


沈黙があたりを包み、なつきの瞳が大きく開かれた。


「本当なの?」


「うん」


俺はうなづいた。


何か、なつきは考え込んでいるようだった。


「な・・・つき?」


「ねえ、信じてもいいの?」


「当たり前だろ?真顔でこんな冗談が言えるかよ」


「ふうん・・・」と、なつきは言った



「信じてあげる。そのかわり」


「そのかわり?」


「海に連れてって」
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