君のためにできること
早めの朝食を取り、今日は久しぶりに、街に行く準備をしていた。


アパートに男の一人暮らしってのも味気ないものだ。


俺がパンを口にくわえ、ジーンズを履いていた時だった。インターフォンが一回鳴る。


こんな朝早く、誰だろう。


急いで鏡で顔をチェックする。鏡に映る自分はひどくやせ細っていて、気味が悪かった。


その時だった。


激しく着メロが鳴った。


俺は焦る気持ちを抑え、メールを見た。





優へ


なつきを避けないで。


今、インターフォンを鳴らしているのは、なつきだよ。早く行ってあげて。


私の事を想ってくれるのは嬉しいけど、それじゃ前に進めないよ。


PS


このメールは他人に見せようとすると消えてしまいます。それに、他人には、このメールは見えません。あなたにしか見えないんです。


あと・・・私はこのメールを送るたびに、私の存在も薄れて行き、消えてしまいます。だから、あんまりメールできなくてごめんなさい。


でも、あなたのことを助けたい。





「嘘・・・・・・だろ?」


また一回インターフォンが鳴る。今度は弱く、弱く、感じた。


玄関に行き、ドアをそっと開けてみる。


「な・・・・・・」と、俺は驚いて声がでなかった。


「どうしたの?鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔して?」


俺の視線の先にはなつきが口を曲げて立っていた。
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