君のためにできること
「もういいよ、人が見てるから」


なつきはそう言い、俺の腕を静かにどけた。


「なつき、俺、最低だな」


「何で?」


「お前を苦しめてる」


「そんなことないよ」


なつきの顔を、正面から見た。頬には涙が通った線がいくつかあり、少し、赤くなっていた。


「もう、顔ぐしゃぐしゃ。化粧も落ちちゃった。あはは」


なつきが微笑んだ。
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