君のためにできること
少女の声はなつみの声だった。


「これで信用した?」


俺は黙っていた。さりげない少女の仕草がなつみと重なる。俺の瞳からが自然に涙が零れ落ちた。


なつみが目の前にいる。姿は違うけど、なつみが俺の目の前にいる。


「なつみ・・・逢いたかった。俺はあの時、そばにいれなかった。悔やんでるよ、今でも。もう逢えないかと思った。でも、お前は逢いに来てくれた。もう一度逢いたかった。お前に言いたいことがたくさんありすぎた。俺・・・最低な人間だ。今はなつきと付き合っている。お前のかわりとかじゃないけど、あいつを一人にしたくないんだ」


「優、わかっているよ」と、少女はなつきの声で言った。


「お前にメールで助けてもらったこと、忘れないよ。自分の身を犠牲にして、俺を事故から守ってくれた」


少女は微笑んだ。月明かりの下で。そして、もう一度、少女は呟いた。


「愛してる」
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