君のためにできること
いつだって、なつみは俺のそばにいてくれた。


限りないばかりの、時間だったけど、俺のそばにいてくれた。


同じ空を、あの時は見れたんだ。一つの空を自由に、いつでも二人で見れた。空の形はいつも違う。心を表しているようだ。


夕焼けの空を眺めながら、俺はシエルに問う。


「この夕焼け空を染めているのは、誰なんだろう?」


「あなた自身の感じる心の色、または心の形」


「詩人的、答え。または心理学も入ってるね」


俺は、少し微笑んだ。


「なつきは、俺がいないと駄目なんだ。そばにいてやれること、それは俺にしかできないことなんだ。同情じゃない、俺はなつきが好きなんだ」


シエルの表情は見えない。ただ・・・彼女の瞳は寂しそうに、俺を見つめていた。


「わかってる、あなたがなつきを愛してること。私はあなたを助けたいだけ・・・」


夕闇に映える、シエルの漆黒の残影は悲しみに満ちていた。
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