揺れない瞳


小さな頃からの癖で、自分の前向きな想いや未来への叶いそうにない夢を抱いた時、いつも心を閉ざして期待しないようにしてしまう。

私一人を大切にしてくれる人に巡り合うなんてできなかったから、この先もそんな幸せを手にするとも思えなくて。
あっさりと蓋をされて遠くに押しやられてきた望みや願い達…。

私が、央雅くんに抱いている想いがどんなものなのか、自分でもはっきりと形にはなっていないけれど、それでもやっぱり。
私と同じようにときめいてくれていれば嬉しいと、つい願ってしまって、そのたびに慌ててその願いを封印しながら。

どんどん央雅くんに惹かれていく。

繋いだ手の温かさだけじゃ物足りなくなる自分が切ない。

改札を出て、目の前の私の住むマンションを見上げると、

「相変わらずすげーマンションだな。結乃の父親って相当稼いでるよな」

くくっと笑いながら半分あきれつつ呟いている。
部屋の内装も外観から予想するレベルを裏切らない豪華な仕様で、一人で暮らす私を不思議な目で見ていた。

私の生い立ちは、芽依さんからおおまかには聞いていたらしいけど、付け加えるように少し、私の口からも聞いてもらった。

同情するでもなく流すでもなく、淡々と聞いてくれた央雅くんがどう受け止めたのかはわからないけれど、決して甘くない私の人生に寄り添ってくれるように

『結構タフな人生だな』

と一言だけ。

…それだけで、二人の距離も縮まったように思えたのは私の錯覚かな…。

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