揺れない瞳

「コンパ、参加だからね。拒否権なし」

「え……?加絵ちゃん……?コンパ?」

大学のカフェテリアの片隅で、入学以来仲良くしている加絵ちゃんとランチを食べ始めた途端に言われた。

驚いて加絵ちゃんを見返した。

ふふん……。

何かを企んでるとすぐにわかる加絵ちゃんは、コーヒーを飲みながら小さく笑った。。

「今日こそ連れていくからね。毎日家と大学の往復だけじゃ面白くないでしょ?
せっかくの大学4年間、彼氏を作らないなんてもったいないよ」

綺麗な顔で私を見つめる表情には、断りたくても断れない迫力に満ちている。
立てばスタイルの良さが際立って、男も女も思わず振り返る彼女。

綺麗な顔と、男前の性格とのギャップに驚いて、加絵ちゃんと初めて会話した時には茫然とした。

自分の意見をはっきりと表現できる彼女は、私の憧れであり目標。

一浪した私よりも年下の彼女が、どうしても年上の保護者に思えてならない。

「今日のコンパの相手は医学部の男達だから期待してなさい。
未来の医者を今から知り合いの一人にしておくのもいいもんよ」

「加絵ちゃん……コンパは無理。私がそういうの向いてないって知ってるでしょ」

向いてない。
そう。
人見知りで初対面の人、それも男性とにこやかに話すのは苦手。
そんな私がコンパに誘われても、行きたくないに決まっている。
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