揺れない瞳
「言い訳無用。とにかく参加だから。
6時に駅前のお好み焼き屋に集合ね」

有無を言わせないのはいつもの事だけど、今日の加絵ちゃんから届くのは普段感じない威圧感。

綺麗な顔って、どんな表情でも綺麗なんだな…。

何を言っても加絵ちゃんに逆らうなんてできないって諦めた私は、苦笑いしながら頷くしかできなかった。

コンパというと抵抗持ってしまう感じだけど、普通に楽しく新しい人間関係が築ける場だと解釈すれば、それなりに楽しみにもなる。

普段一人で生活している私には、大勢の中で笑いながらおいしいものを食べるのは心安らぐ時間でもある。

そんな私の気持ちを察してくれてる加絵ちゃんに、心の中で感謝。

家族の縁に薄い私には、一人きりの時間が過去の大半をしめている。

大学から帰ると、当たり前のように訪れる孤独な時間。
慣れたとはいえ少しでも気持ちを軽くさせられるように。
加絵ちゃんが時々こうして外に連れ出してくれるのが嬉しい。

人付き合いの得意じゃない私が、人との繋がりを求めてるなんて…、おかしいんだけど。

一人きりは寂しいから。

得意じゃなくてもコンパは楽しい。

一人じゃないから。


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