揺れない瞳
寂しさから意識をそらす術なんて、よく知っている。

そう。

何も考えないようにしよう。
この寂しさも切なさも、手の平が冷たくなっていく虚無感も全て。

考えない。そして忘れる。

「芽依さんに、よろしくお伝えくださいね。そのうち、芽依さんとはまた会うかも。ですけど」

にっこりと笑って、そっと央雅くんを見上げると、何の感情も見えないまま、ただ立ち尽くしている。

どう見ても、機嫌が良いとは言えない雰囲気に、思わず見つめてしまう。

「あの…。央雅くん?」

小さく、そうこぼしてしまった私の言葉にも反応しない。
ただ、無表情のまま。


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