揺れない瞳
結乃と出会ってすぐ、俺の気持ちは一気に結乃に捕えられた。

大学やバイト先で、女から声をかけられる事も少なくない。
時には誘いに応じた事もあったけれど、俺の心を掴む女には出会ったことはなかった。
大して興味を持たないままでも、それなりに女の相手はできる。

そんないい加減な付き合いを続ける中で、恋愛自体面倒だとも思っていた。

芽依ちゃんへの重い感情を抱えていた俺には、自分が誰かを愛して愛されて幸せになる未来を想像する事は難しかった。

そんな俺が、結乃と出会ってからは人が変わったように結乃の事が頭から離れず、絶えず彼女の事ばかり考えていた。

バイト先や部屋に押しかけて、戸惑う結乃を繋ぎ留めようと必死だった。

そして、ようやく結乃と思いが通じ合ってからは、更に彼女への愛情は右肩上がりで、一時も離したくない感情が溢れた。

俺がバイトする店にやってきて、男の客の視線を集める可愛さをふりまいている結乃にイライラした。
バイト仲間の祥が結乃に近づくのでさえ腹が立った。

『一緒に暮らしたい』

そう言わずにはいられないくらいに結乃への執着心は膨れ上がっている。
自分ではどうしようもないくらいに結乃が欲しい。

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