揺れない瞳
名前を言えばいいよね。
少し緊張して、次々と自己紹介していく声を聞きながら、何気なく前を見ると。
細身の男の子が携帯をいじっていた。
メールでも読んでいるのか、ほんの少し緩い笑顔を浮かべて俯く顔はとても整っていた。
本当なら、そんな顔にみとれるのが当たり前なんだろうけど。
私の視線は、携帯に揺れているストラップに集中してしまった。
じっと、ただただ見つめるストラップは、ひまわりの花。
直径2センチほどのひまわりの花は、細い黄色の糸で編んであって、真ん中の種の部分は茶色と黒の糸で編まれている。
真ん丸のそのひまわりを揺らしながら、メールを読んでいたらしい男の子は私の強い視線に気づいた。
ん?
と首をかしげて私の視線の先を辿ると。
ひまわりがその先にあるってわかったようで、更に不思議そうな顔をした。