揺れない瞳
「さっき電話した時泣いてただろ」
「……」
ひっく……ひっく……。抑えようにも抑えられない。
ひとしきり涙を流した後、涙は止まっても尚、まともに声も出せない。
央雅君の膝の上で、気持ちが落ち着くのを待っている。
時々背中を撫でてくれる手の優しさが私にとっては慣れていないもので、単純に緊張感もあるし落ち込んだ気持ちももて余すし。
泣き止んだに違いないのに泣き止んだだけの私。
そんな私を焦らせることなく、見つめたまま落ち着くのを待ってくれている央雅君から意識をそらせない。
でも、こんな状態なのに、こんな深夜なのに、妙に落ち着いてくるのも確か。
「何で泣いてたかは聞かないけど……一つだけ。
どこも痛くはないんだな?大学の帰りに襲われたりとか……それはないんだな?」
「ん。そんなんじゃないし……心配しなくても大丈夫。
明日になれば気持ちも復活してるはずだから」
少しずつ治まっていく嗚咽の合間に答えて、大きく呼吸をして。
体に満ちている悲しい感情を封印。
悲しさに蓋をするのは慣れてるから、きっとしばらくすれば大丈夫。
「……目、赤いままだな……」
央雅くんの呟きに、思わず視線を下に落とすと、それまで背中にあった温かい手がまぶたの上に移った。
びくっと反応する私に構うことなく、ゆっくり触れるその指先に、自分の体全てを委ねてしまいたくなる。
自然と体も央雅くんの胸に傾いていく。
「泣くのも、泣き止むのも…慣れてるんじゃないか?」
「……。……そんな事ない」
どうしてそんな事見抜くのか。
わからない。
会って数日の、今目の前にある瞳はまるで、私を見透かしているよう。
「私は大丈夫……」
相変わらず俯きながら言っても説得力はなくて、央雅くんはくすっと笑っただけ。