家族になろうよ!
「朝からまたそれかい?服織女くん、ほんとに好きだねぇ」
売店のおばちゃんに彩花さんからもらった五百円玉を渡し、ガラス扉の冷蔵庫からストロー付きのパック牛乳を取り出す。
愛想よくした覚えなどないのに、いつからかこんなふうに親しげに話しかけられるようになってしまった。
「お腹壊さないようほどほどにするんだよ。はい、四百円」
うるさい、俺の胃腸はそんなに軟じゃねえ。
ぶすっとしながらお釣りを受け取ると、その上に更に何か乗せられる。
『一日分のカルシウムが摂れる!骨伸び伸びウエハース』
「おばちゃんのおごり。頑張るんだよ!」
……俺の魂胆など見え見えだったようだ。
赤面しつつ廊下を歩いていると、追い打ちをかけるように、二年生と思われる女子から遠巻きに「服織女くーん!今日も可愛いね!」と精神攻撃を受けた。
同級生だけならまだしも上級生にまで知られているとは、俺ってどんだけ有名なんだよ。
悔しくて、その場で牛乳を一気飲みしてやった。
教室は、まだ閑散としていた。
ちょうどいい。
俺は席に着くなり、もらったウエハースの箱をこっそり開けた。
この羽根のように軽いスカスカしたものを食ったくらいで、どうにかなるとは思えない。
でも、信じる者は救われるんだ。
願いをこめて一口かじる。
体が必要としているせいか、やたら美味く感じた。
すぐに食べ切って、さて、もう一枚。
「服織女くん、おはよう」
ほがらかな声が鼓膜を震わせた瞬間、反射的に手がウエハースの箱を覆い隠した。
座っている椅子の足を蹴ってしまい、倒れそうになって机にしがみつく。
「おはよう……」
努めて冷静に挨拶したが、これだけの動揺を見せたあとではごまかせない。
登校してきたばかりの早乙女那美は、昨日と同様に、ただでさえ大きい目を更に大きく見開いていた。