実力の差




体の底から力が湧いてくる。



あれだけ女にめった打ちにされて、もう死ぬかと思ったくらいなのに。



改めてオレは鬼の力に驚いた。


みるみる傷が治癒していく。




「ふぅ〜ん。コレ無しでも鬼になれるんじゃない」

女は見る見る鬼の姿に変わっていくサキを見つめながら不気味に笑う。

そして、手に持つ唐辛子の入った袋を海へと投げ捨てた。


『…封印の腕輪にヒビを入れられたからな』

サキの両腕にはしっかりと腕輪が取り付けられている。

しかし、女との戦いで両方の腕輪に亀裂が入ってしまった。それにより力を制御出来なくなり、力が漏れ出てしまったのだ。


今はまだ理性を保っていられるが、これ以上腕輪が損傷したり、鬼の力を使い過ぎて腕輪に負担がかかってしまうと、完全に本来の姿に戻ってしまう可能性がある。


…それは、もう二度と人間の姿には戻れないことを意味する…。



『短時間でケリをつけてやるさ…』

「…そう簡単には出来ないわよ」



鬼の力の破壊力は分かっている。

オレが制限なく攻撃をすれば女の体がどうなるかは大方予想がつく…。


だけど、だからといって手加減をすればそれだけ時間もかかり、腕輪が壊れてしまう…。



オレは短時間でケリをつけると言ったがそれはオレの目標であって、実際はどうなるか分からない。


なるべく時間はかけたくない。


オレはそう心の中で唱えながら、真向かいの相手に向かって走り出した。



そのスピードが今までの何倍も速く、オレは女自身が止まっているような錯覚を覚えた。

「…!」

オレは女の背後に回った。けれど女はそれにすぐに反応してオレの攻撃をかわした。



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