LOVE STORIES
「おはよう」

 学校に行く途中で真希は同じクラスの美佐子に声をかけた。

 おはよう、と美佐子は返事をした。

「ねえ、聞いてよ。昨日ふられちゃったんだ」

 真希は落ち込んでいる風を装う。

「えー、何で?」

 美佐子は驚いた顔を見せた。

「他に彼女が出来たんだって。ありえなくない?」

「何それ。最低じゃん」

「本当最低だよ。ちょっと忙しくて会えなかったからって、すぐ他の女のとこ行くんだもん」

「逆に良かったんじゃない。そんな男と別れて」

「そうかな」

「どっぷりはまっちゃって、ずっと引きずるよりいいよ」

 あんな男にはまるはずがないのだが、「そうかもね」と答えておいた。

 真希はこんな会話をするために男と付き合っているのだと実感する。

 17歳という子供とも大人とも言えない真希は、周りよりも早く大人になりたいという気持ちが人一倍強かった。

 恋愛と言うのはその象徴である。大人になったからこそ恋をするのだ。

 中学生のような、子供の恋ではない。テレビや映画の大人の恋をしなくてはいけない。

 真希の恋愛観はそんなところから生まれていた。
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