LOVE STORIES
 翌日も相変わらず綾子は美紀とファーストフード店にいた。

「あたしが引っ越す場所なんだけどさ、ここよりも田舎らしいんだ」

「えー、最悪じゃん。ここだって服とか買いに行くの、電車使わないといけないのに」

 綾子は努めていつも通り振る舞っている。昨日、いつも通りいることが美紀にしてあげられることだと決めたのだ。

 上原のことは一旦は忘れようと思った。

「そうだよ。多分、電車とかで行ける距離に可愛い洋服屋さんないかも」

「じゃあ、休みになったら戻っておいでよ。その時一緒に買いに行こ。それぐらいだったらおばちゃんたちも許してくれるでしょ」

「うん。でも、その時は欲しい服はあたし優先だからね」

「それはずるいよ。あたしだって滅多に買い物行けないんだから」

 綾子と美紀は小学生のころから仲がいいので、ファッションに興味を持ちだした時も一緒だった。

 そのため、服のセンスが似通ってしまい、一緒に買い物に行くと欲しいものが同じになってしまう。

 そうなればじゃんけんをして、勝った方がその服の購入権を得るのだ。


 こういうことももう少しで出来なくなるのかと寂しくなった。

 やはり、美紀は一番の親友だ。決して代わりのいない唯一無二の存在なのだ。

 彼女をだましている自分を心の底から嫌悪した。
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