LOVE STORIES
 綾香はもともと真面目で、親から言われなくても宿題なんて自分で終わらせることが出来る。

 それに対して修一は勉強が大嫌いだった。

 嫌なことは後回しにする性格で、宿題はギリギリになるまでやらない。給食だって嫌いなものは最後に牛乳と一緒に流し込む。

 そのため途中で計算がこんがらがったり、漢字ドリルで同じ漢字を何度も書いたりするのが面倒になったりして、何度も放り出そうとしたが、それでもずっと綾香にお尻を叩かれながら、なんとか期限までに終わらせることができた。


 宿題を終わらせることが出来た喜びはいつにも増して大きかった。それは綾香をがっかりさせずに済んだからだ。

 修一が宿題を終わらせた時の綾香の嬉しそうな表情は今でも鮮明に憶えている。


 宿題の次の条件は花火を見たらすぐに帰ってくること。お祭りの一番のイベントである花火は夜の八時ぐらいに終わる。それ以上遅い時間はさすがに小学校三年生には危ないということだ。


 他にも持っていくのは五百円までとか、声をかけられても知らない人にはついて行かないとか、細かいことはいくつかあったが、これらを約束して、待ちに待ったお祭り行きの正式な許可がおりることになる。
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