Liberty〜天使の微笑み
第10話 動き出す時間
頬に温かみを感じ、ゆっくり目を開けた。
カーテンでやわらげられた日差しが顔を照らし、オレンジ色の光が、部屋を包み込んでいる。
「――――おはよう」
そんな音声が聞こえ、私は何度か瞬きをして、近くにいるであろう人物を見た。
橘、くん……?
「昨日、あれからずっと起きないって聞いたから……かなり心配した」
ぎゅっと手に力を込められ、ようやく私は、右手を握られていることに気が付いた。
私、ずっと寝てたんだ。
先生と話した後の記憶がなく、時計を見れば、今は午後六時。先生と話したのが昨日ということは、十二時間以上も寝ていたことになる。
「き…、……ご、め」
上半身を起こし、ぼぉーっとする頭をなんとか働かせながら、言葉を口にした。
昨日引き留めたくせに寝ちゃうなんて……悪いことをしたと思って、私は橘くんに頭を下げた。
「もしかして……昨日のこと、気にしてる?」
頷くと、仕方ないだろう? と笑う橘くんの声が聞こえ、私はおそるおそる顔を上げた。
「話聞いた後だったらしょうがないって。――ちょっとは、覚えてる?」
「…………」
正直、完全には覚えてない。
でも、体がカレを……佐々木 純哉と言う名前を聞いた途端、拒絶したのだけはしっかり覚えてる。
手を離してもらい、携帯に文字を打ち込んで、少しだけと伝えた。すると橘くんは、どこか安心したような表情を見せた。