Liberty〜天使の微笑み


 肩に置かれた手が、とても温かくて。大きいなとか、ふだん考えないようなことに意識がいってしまって……まだ、言葉がうまくまとめられない。

 黙る私に合わせているのか、橘くんも黙ったまま。でも、さすがにこのままでいるのは、それはそれで恥ずかしいから――俯きながらだけど、ゆっくり、橘くんの方を振り向いた。

 未だ、肩には手が置かれたままで。泣き出しそうな、そんな感覚が胸に湧き上がってきて……鼓動の速さは、どんどん増していくばかりだった。





「…………」





「――――もし、さ」





 ゆっくり、言葉を発する橘くん。耳を傾けると、やわらかな声が、私の耳に入ってきた。


「オレのこと意識してるなら……うれしいよ」


 ハッとして顔を上げると、とてもうれしそうに笑う橘くんの顔が見えた。

 う……うれ、しい?

 そんなの、本当に私……っ。

 自分のことを好きなんじゃないかって、自惚れてしまう。

 好きだって言われてないけど、これが告白だと言われればそうかもしれない言葉だけど。そんな都合よく受け取れる度胸は……私にはないよ。


「……ぉ、いぅ…い、み?」


 だから、ちゃんと聞かないと。

 どんな意味で言ったのか知りたい。知らないと、この先似たような言葉を囁かれれば、一人で舞い上がってしまいそうだから。





「――そんなに、意味が知りたい?」





 悪戯っぽい笑みを浮かべながら言う橘くんに、私は首を縦に動かした。
< 170 / 234 >

この作品をシェア

pagetop