Liberty〜天使の微笑み
第11話 向き合う過去


 橘くんと、晴れて恋人となった日から数日。

 記憶がちゃんとしてきたこともあり、私は警察の人と話をしていた。元々はあの日の夜の話だけだったけど、母が私に暴行を加えていたこともあり、そのことも詳しく聞かれた。


「それでは、幼い頃からこういうことは日常的だったと?」

「はい。それが、あたり……まえっ」

「無理はしないで下さい。辛ければ、ペンでも携帯でもいいので、楽な方を使って下さい」


 話せるようになったものの、あまり長い時間は難しくて、せいぜい五分も続けられればいい方。それ以上続けると、たどたどしい言葉になってしまって。だから、残りの会話は携帯を使い、話しを進めていった。





「それで――市ノ瀬さんは、訴える気持ちはおありですか?」





 話も終わりに差し掛かると、神妙な面持ちで、そんなことを聞かれた。

 訴える、か……。

 今までそんなことを考えたことがないから、急に言われても、正直どうしていいのか困ってしまう。


「気になることがあれば、遠慮なく言って下さい。もし、仮に減刑を望むのであれば、多少は可能となりますし」


 色々なことが頭を駆け巡って、今は答えを出せない。

 だから私は、しばらく考えさせてほしいと言い、その日は引き取ってもらった。





 減刑、かぁ……。





 自分が人の一生を左右するのかと思ったら、とても恐ろしい。

 訴えを起こせば、それで気が済むとか、そういう問題ではなくなるし……何より恐ろしいのが、母親からの報復。

 どうなっているかわからないけど、一応は接近禁止命令が出ているらしい。それでも今は釈放されているとかで。なんとなく……お金や伝を使って出てきたんじゃないかって。

 母親の性格からしたら、それぐらいやってのけるは容易いだろうから。
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