Liberty〜天使の微笑み


「ぃ、いうっ、から!」


 それに……なんだか、ちょっと意地悪な気がする。

 ふだんとは違う姿に、私はドキドキしっぱなしだった。


「で――何考えてたの?」


 たのしそうに聞く橘くんに、私は視線を逸らしながらも、思っていることを口にした。


「な、なんだか……わた、し、だけが」

「市ノ瀬だけが?」

「は、恥ずかしい、のかなって。――私、だけ。どきどき、してるみたいで……?」


 チラッと視線を向けて見れば、そこには少し驚いたような、頬を赤く染めた橘くんが目に映った。





「あのさぁ……オレだって、一応は恥ずかしいよ?」





 ぽつり呟かれたのは、意外な言葉。

 そんなふうには見えなかったから、私はちょっと信じられなかった。


「でも……か、おには、出ない、から」

「そりゃあ市ノ瀬がカワイイから、からかうのに夢中になっててそう見えてるだけ。内心はオレもバクバク。――わかるだろう?」


 ぎゅっと抱きしめられ、橘くんの心臓の音が間近に聞こえる。自分の鼓動と合わさっていくようで、二つの心臓は、大きな音をたてていた。





 ――――同じ、なんだ。





 そう思ったら、なんだかうれしくて。私はそっと、背中に手を回し抱きついた。
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