Liberty〜天使の微笑み
おまけストーリー

絵画から始まる恋


 学校から、自宅へと帰る途中。オレは、あることが日課になりつつあった。


「……いない、か」


 それは、高校二年の終わり頃だっただろうか。

 いつもの駅に、見慣れない絵が飾られていることに気が付いた。駅員のおじさん曰く、何かないと淋しいと思い、よくここら辺で絵を描く少女に頼んだのだと。

 絵は、月が大きく描かれていて、そこから雫が滴り落ちる様を描いている。青を基調として描かれたそれに、正直オレは……一目惚れ、だった。

 単純にキレイだからではなく、その先には、何かあるんじゃないかと思わせるような色合いに、すっかり魅入られていた。





「―――あの子なら、今日は来とらんよ」





 ホームできょろきょろとしていると、駅員のおじさんにそんな言葉をかけられる。


「毎日来るわけじゃないからの。―――君、あの子に恋でもしたのか?」


 ニヤニヤとした表情で聞かれ、オレは咄嗟に、違いますよ! と、声を出していた。


「絵を、描いてるみたいだったので……なんとなく、気になっただけです」
< 223 / 234 >

この作品をシェア

pagetop