Liberty〜天使の微笑み

 その場には他に誰もいなくて、話しかけるなら、今しかないんじゃないかと、そんな考えが過る。





「―――何、描いてるんですか?」





 手を止めると、少女はゆっくりこちらを振り向く。

 初めて近くで見る顔に、結構カワイイな、なんて思ってしまった。





「えっと……天使、です」





 少し間を置いてから、そんな言葉が聞こえる。

 小さく紡がれた音声に、少し、凛とした印象を受けた。


「へぇ〜天使か。そーゆうの描くの、好きなの?」

「好き、というか。―――どうしても、描けない、から」


 そう言ったあとの少女の表情が、みるみるうちに曇っていく。

 描けないって、練習してるってことか?

 余計なことを聞いてしまったのかと思っていると、少女は再び手を動かし、絵を描き始めた。

 ……これ以上は、邪魔になりそうだな。
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