Liberty〜天使の微笑み
別れると、私はさっそくカレシにメールを入れた。二人きりじゃなくても、男子と遊ぶことになった時は必ず報告するようにしている。
「これでよし、っと」
携帯をカバンに入れると、私は駅を目指した。
大学から家までは一時間ちょっと。家から最寄りの駅までは、自転車を使い通っている。
駅に着くと、ちょうどホームに電車が入ってきた。乗り込むと人も少なくて、席も運よくゲット。ちょっとしたラッキーにほころんでいると、発車を告げるベルが響き渡った。すると、窓の向こうから勢いよく走って来る人の姿が。乗れないんじゃないかって思ったけど、駅員さんが笛を鳴らさなかったおかげか、その人は電車に間に合うことができた。
「――――セっ、セーフ…」
よっぽど全力で走ったんだろう。乗り込んで来た男の子は、肩で大きく息をしていた。
「はぁ~……。あ、市ノ瀬。今帰りだったんだ?」
隣いい? と近付いて来たのは、友だちの男子だった。
「うん、どうぞ。――今日はギリギリだったね?」
「先生と話してたから。これ逃したら、次は各駅だから焦ったぁ~」
隣に腰かけたのは、デザインコースの橘朔夜(たちばなさくや)くん。コースは違うけど、美緒と友だちだったことで、一年の時から仲良くしてくれている。あんまり男子と話すのは得意じゃないけど、橘くんは私が黙ったままでも、「つまらない」とか「何かないの?」って言ったりしないから話しやすい。
「そーいや、市ノ瀬も今夜の集まり行くの?」
「今夜って、橘くんも美緒に誘われたの?」
「ボーリングの予定でね。なんか合コンもする流れらしいけど、オレは遊び専門」
よかった。橘くんも参加するんだ。
人見知りってほどじゃないけど、あまり知らない人ばっかりだと、まだちょっと緊張するんだよね。
「集まる人数とかって聞いてる?」
「男はオレ入れて五人で、うちの科から二人参加ってぐらいかな」
となると、女子も同じぐらい人数がいるってことだよね。
思ったよりも多い人数に、私は苦笑いをしてしまった。
全員が全員ってわけじゃないけど、こういう集まりにはベタベタしてくる人もいるから、そこが一番気になるところだった。