今度はあなたからプロポーズして
「そうだったんですかぁ…」
とそれでもやはり申し訳なさ気に
留美は目を伏せた。
「ん?気が強かった…のかのぅ?
まぁ、自分の信念を
しっかり持っておったのは
確かじゃ。
自分がこうと決めたら、
頑固じゃったしな。
プロポーズだって
向こうからじゃったし…
ふふ、当時じゃ
考えられなかったことじゃが」
気兼ねなどいらんとばかりに
老紳士は話を続けると
亡き妻を愛しく懐かしむように
遠くを見つめた。
「えっ!?…奥様から
プロポーズされたんですか?」
しゅんとしていた留美は
老紳士の話に
弾かれたように頭を上げると
俄然興味をそそられた。
偶然にも、
今の自分の境遇に近かったからだ。